光のもとでⅠ
「さ、最近は湊先生にも楓先生にも失敗されたことないですっ」
「ほほぉ……最近とはいつまでのことを言うのでしょうね?」
 怖くて及び腰になっていると、
「腕のいい医師になってもらいたいだけですから、そんな怖がらなくても大丈夫ですよ」
 採った血液の入った真空管を振りながら言われる。
「採血の結果はパレスでお話ししましょう」
「でも、その日は――」
「えぇ、湊の結婚式です。お越しいただけるのでしょう?」
「はい。でも……」
「でも?」
「…………」
「お気になさらず。その際にも診察させていただきますので、そのつもりで」
 涼先生はにこりと笑ってステンレストレイを片手に病室を出ていった。
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