光のもとでⅠ
「あ、あの……これのリゾットをお願いできますか?」
 指差したのは、拓斗くんがイチオシと言っていたシーフードのスープ。
「かしこまりました」
 七倉さんはにこりと笑い、メニューに夢中になっている拓斗くんに声をかける。
「拓斗くん、今日のハンバーグはいつもよりも少し大きめに作ろうと思ってるんだよ」
 顔を上げた拓斗くんから慣れた手つきでメニューを取り戻した。
「じゃ、もうちょっと待っててね」
 七倉さんは拓斗くんの頭を撫で、私たちに一礼してからカウンターの奥へ消えた。
「ふふ、七倉くんも上手にあしらうようになったわね~」
 満足そうに美波さんが笑う。
 このまま、何事もなくランチが運ばれてくるのを待つはずだった。
 けれど、うまくいかないときはとことんうまくいかないものらしい。
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