光のもとでⅠ
 正しくは、エントランスの自動ドアが開いて外気が入ってきたのだ。
「あっ! 拓斗だー。何してるの? 琴が帰ってくるの待っててくれたの?」
 お団子ヘアの、目のくりっとした女の子が走り寄ってくる。その後ろには大きなトートバッグを抱えた里実さんがいた。
「琴……どう見ても琴を待ってたんじゃなくて、秋斗お兄ちゃんにぶらさがってるようにしか見えないでしょう……」
 額を押さえ呆れたふう。
「コト」と呼ばれた女の子は佇まいを直し、スカートの端を摘んでお姫様のように膝をちょこんと沈めた。
「秋斗お兄ちゃま、ごきげんよう」
 天使のような笑顔に見惚れていると、クルっとこちらを向く。
「あなた誰っ?」
「あ……御園生翠葉です」
「スイハって……あなたが拓斗の言ってたお姫様なのねっ!? 私は高崎琴実(たかさきことみ)よっ。幼稚舎じゃ拓斗とは王子様とお姫様の仲だったんだからっ」
 キッ、と睨みつけられ、そこに里実さんが割って入った。
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