光のもとでⅠ
 お父さんに訊かれて、
「ほかも見たいっ」
 飛びついたのは私だけではなかった。蒼兄も目を輝かせている。
 そこに、スーツを着た背の高い人が現れた。
「総支配人の御崎と申します。お出迎えに間に合わず申し訳ございませんでした」
 きりっとした男の人が腰を折る。
「気にしなくていいよ。道が空いてたんだ。あとは一番のりを狙ってたんだけど……俺たち、一番のり?」
 お父さんが訊くと、
「はい。次にご到着されるのは神崎夫妻のご予定です」
「じゃ、パレス内をちょっと案内して回ってもいいかな? 娘と息子に見せたいんだ」
「どうぞごゆっくりご覧ください」
「でも、さすがに俺たちが泊まる客室以外は見れないよね?」
「……と申しますと、カップルタイプのゲストルームでしょうか?」
「そう……。ダメ、だよね?」
 ダメもと――でも、どこかおねだりしてるような声音で訊くと、その人はクスクスと笑いだした。
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