光のもとでⅠ
「以前、白野のパレスでお会いしております。御崎です」
 思い出すのに少し時間を要した。
「あっ、森に行くのに手を貸してくださった――」
「思い出していただけて光栄です」
 にこりと柔らかく笑む。
 そして、ゆっくりと体勢を変え、私を立たせてくれた。
「お顔の色が優れないようですが、休まれますか?」
「いえ、大丈夫です」
「さようですか……?」
 御崎さんに支えられたまま広い回廊に出ると家族一同に心配される。
「無理せずに休んだら?」
 お母さんに言われたけれど、それは断った。
「きっとお腹が空いたんだと思うの」
 空腹時にお腹が痛くなるのは感覚で覚えた。けれど、たったその一言にみんなが絶句し顔を見合わせる。
< 8,825 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop