光のもとでⅠ
 想像を文字に変換しようとしたとき、私たちが入ってきた入り口とは反対側から数人の話し声が聞こえてきた。
 手に嫌な汗を握る。
 緊張を和らげようと、目の前にあったワイングラス型のキャンドルホルダーを見つめる。
 ゆらゆら揺れているものを見たら、程よく力が抜けそうで――。
 でも、グラスの中に灯る炎は小さくて、人の動きをいちいち感じ取って揺らぐから、余計に動揺が大きくなる。
「こんばんは」
 かけられた声にはじかれるように顔を上げる。まるで、振り代を振り切ってしまった錘のように。
 そこにはドレスアップした栞さんと昇さんが立っていた。
 ふたりの姿にほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。さらなる気配を感じ反射的に身体が動く。
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