光のもとでⅠ
 私が座っている側は、左から秋斗さん、海斗くん、唯兄、私、蒼兄、昇さん、湊先生、静さんのお父さんの九人。
 その対面に、秋斗さんと海斗くんのご両親である斎さんと紅子さん。お父さんにお母さん、栞さん、ツカサ、真白さん、柊子先生。
 心臓がドクドクと駆け足を始め、頭の中でうるさいくらいに響く。
 その音を消したいがために、自分で大声を発したくなるってなんだろう。存在感はゼロになりたい境地だというのに。
 緊張を感じれば感じるほど呼吸が浅くなる。
 落ち着かなくちゃ、落ち着かなくちゃっ――。
 テーブルに視線を落とし、自分が感じる一切の音をシャットアウトする。
 最後まで鳴っていたのは自分の心臓。すごく厄介で手強い相手。
 無音になったところに許可したのは呼吸音。肺までの道のりと、肺からの道のりを行き来する酸素と二酸化炭素。
 十二分にそれを感じられるようになってから、左側のボリューム規制を少し甘くする。と――。
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