光のもとでⅠ
 何を言われる前にゴクリと唾を飲みこんだ。
 静かすぎる部屋では、その音が涼先生に聞こえてしまったかもしれない。
「血液検査の結果ですが、正直に申し上げてあまり良い結果ではありませんでした。鉄欠乏性貧血の状態です」
「え……?」
「体内に鉄が足りていません。治療を要す数値です」
 耳を疑った。
 今まで、鉄分が少ないと言われることはあっても、治療が必要なほど鉄分が足りないと言われたことはなかったから。
「少し歩いただけで息切れするのは症状のひとつです。貧血を起したりはしていませんか?」
 訊かれてもピンとこない。
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