光のもとでⅠ
「至急」という赤い文字が目に痛かった。
「では、ご両親に話しに行きましょう」
 先生が言い終わると同時、ピルルル、と単調な電子音が響いた。
 先生がスーツの内ポケットから携帯を取り出し、ディスプレイを見て笑みを深める。
「すみません。少しお待ちいただけますか?」
「はい……あの、外に出てましょうか?」
 医務室のドアに手をかけると、「かまいません」と制止された。
 私には再度座るように椅子を勧め、先生は壁に寄りかかって通話に応じる。
 電話に出て、一言目に「用件は?」と言う人を初めて見たかもしれない。
「……ならば、本人に直接伝えたらいいだろう?」
 長い脚を交差させ、涼先生はくつくつと笑いながら話す。
 相変わらずツカサと似てると思うものの、ツカサなら無表情で淡々と話すだろうな、と思ったり。
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