光のもとでⅠ

43

 テーブルの上がとてもきれいに見えた。
 これといって特別なものが並んでいるわけではない。
 でも、サラダボールの中で淡いグリーンに混じる赤いトマトがつやつやしていてきれい。
 スクランブルエッグの柔らかな黄色に香ばしく焼きあがったパン。優しい色のミルクティーとキラキラと光るシルバーのカトラリー。
 何もかもがキラキラして見える。
 パレスに来てから目に映るものが鮮やかに見えるようになった気がする。
 家にいたときよりも緊張することは増えたはずなのに……。
 そこまで考えてフロアを見回す。と、昨日はなかった静さんと楓先生の姿があった。
 でも、私の知らない人の姿はない。
 結婚式は今日なのに、あと数時間もしたら始まるのに、この場にツカサたちのおじいさんと思しき人はいない。
 いつ、どこで対面することになるのだろう――。
< 8,909 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop