光のもとでⅠ
 思考の魔手は伸びたい放題。あっという間に心の本棚から「ツカサ」という本を取り出し広げてしまう。
 ツカサにどう思われただろう……。さっきの私はどう映っただろう。
 怒ったかな? 呆れたかな? 嫌われた、かな……。
 手が離れたあとはツカサの後ろ姿を見て歩いた。
 それを望んだのは自分なのに、どうしてか寂しかった。
 会話がないと、雪が降っているときみたいに音がなくなる感覚に陥る。
 だから、音がなくならないように話しかけ続けた。
 話しかけるといっても、私に思いつく話題はそれほど多くない。
 湊先生の誕生日が今日であることを知らなかったとか、ブルースターがきれいでかわいかったこと。そんなことを一方的に話し続けた。
 ツカサは、「あぁ」とか「良かったな」とか……そんな相槌を打ってくれていた。こちらを振り返ることはなく。
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