光のもとでⅠ
 さっきと同じやりとり――。
「……あのっ」
「なんでしょう?」
「あの……血色よく見えるようにしてもらえたら嬉しいなって……」
「かしこまりました。少しピンクのチークを乗せましょう」
 人任せに変わりはない。けれど、ひとつでも自分の意思とわかるものが目に見える場所に欲しかった。
 メイクが終わるとクロスを外されブースの隅にあるフィッティングスペースへ案内される。
「リボンはこちらで結ばせていただきますので、お支度がお済みになりましたらお声かけください」
「はい」
 着ていたワンピースを脱ぎ、ハンガーにかかっているドレスを身に纏う。
「水色にして良かった……」
 どう考えても、今の私にはピンクほど似合わない色はないと思うから。
 カーテンを開きリボンを結んでもらうとボレロを羽織ってブースを出た。
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