光のもとでⅠ
 美都先輩が座ったカウンターには埋め込み式のモニターとキーボードが備わっている。モニターはタッチパネルになっているようで、美都先輩がモニターに触れると、ウィーンという音と共に、床からの振動を感じた。
 それにびっくりして立ち上がると眩暈がして、すぐに腕を取られた。
 見事にバランスを崩したけれど、
「……痛くない……?」
「いきなり立つな。今、円形ステージが上昇してるところだ」
 司先輩が支えたままに説明してくれる。
「円形ステージ……?」
「……あぁ、翠は見るの初めてか。この桜林館自体が円形だろ? だから南側のステージ以外にも桜林館中央に円形ステージが設けられている。普段は平面で地下に収納されているんだ」
「すごい……」
「落ち着いたなら座って会計報告に目を通してろ」
 改めて席に着くと、右隣の春日先輩が笑っていた。
「この円形ステージ、ゆっくりだけど回る仕組みになってるんだ。酔ったりする?」
 優しい笑顔で訊いてくれる。
「ぐるぐる、とは回りませんよね?」
「そうだな、メリーゴーランドよりははるかにゆっくり」
「ゆっくりなら大丈夫だと思います」
「周りを見ようとすると酔うから、そのときステージで喋ってる人間を見てるといいよ」
「はい」
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