光のもとでⅠ
「次はこっち」
 唯兄にさっきの厚紙の右側を指差される。
 賛美歌なんてめったに聴かないのに、さっきの曲といい今回の曲といい、どこかで聞いたことのあるメロディ。今度の歌はふたりを祝福する歌だった。
 司祭様が最後の挨拶をすると、湊先生と静さんがこちらを向き、退場の音楽が流れ始めた。曲はバッハ――主よ、人の望みの喜びよ。
 あまりにも色んなことに気を取られていた私は、最後の最後まで弦楽器の生演奏であることに気づきもしなかった。

 湊先生たちがチャペルを出ると、スタッフの誘導で私たちもチャペルの外に出る。入ってきた扉とは別のドアから。
 控えの間のような場所を通って外へ出ると、そこは階段の上だった。
 そんなに高いわけではない。一段の幅が広く取られており、緩やかな傾斜の階段。
 階段の下にはパレスのスタッフがたくさんいた。
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