光のもとでⅠ
 私の視線に気づいたのか、朗元さんと目が合った。
 確かな足取りで階段を下り、こちらへやってくる。
「御園生のお嬢さん。白野のパレスで会って以来じゃの?」
「……その節は、お世話になりました」
 形式ばった返事をするのが精一杯。お辞儀もできなかった。
 寒さからではなく唇が震える。
 答えは出ているのに、心が認めたくないと言っている。この人が、朗元さんがツカサたちのおじいさんであることを。
「翠葉、こちらは?」
 何も知らない蒼兄に訊かれ、唇をきつく噛みしめた。
 答えなくちゃ……。
 そうは思うのに、受け入れたくないことを言葉へ具現化するのは大きな抵抗がある。
「あんちゃん……この人が、藤宮の会長だよ」
 蒼兄の一段下にいた唯兄がボソリと答えた。
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