光のもとでⅠ
「えっ……」
 勢いよく唯兄を振り返った蒼兄は、すぐに朗元さんに視線を戻し私を見る。
「翠葉、お前……」
 声は途切れる。
 きっと、続けようとした言葉は「知っていたのか?」だと思う。
 ……知らなかった。蒼兄、私は知らなかったよ。朗元さんがツカサたちのおじいさんだなんて……。
 私が知っていたのは陶芸作家の朗元さんであり、ツカサたちのおじいさんではない。朗元さんが藤宮の会長だと知ったのは、たった今――。
「お初にお目にかかるの。湊の祖父、藤宮元じゃ。……また、陶芸作家として朗元とも名乗っておる」
 蒼兄が唾を飲む音、細く短く息を吐き出す音が順に聞こえた。
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