光のもとでⅠ
時期も場所も、考えるまでもなく明確な答えを持っている。けれども、それは藤宮の会長として会ったわけではない。
「翠葉?」
「どうかしたの?」
ふたりに顔を覗き込まれ、慌てて言葉を探す。
「初めて会ったのは五月の終り、ウィステリアデパートで――」
話し始めてすぐ、否定したい衝動に駆られた。
「でもそれはっ、陶芸作家の朗元さんとして会ったのであって、藤宮の会長っていうのは知らなくて――」
ツカサたちのおじいさんなんて知らなかった。
目に涙が溜まり始めたとき、ちょうどよくスタッフから声がかかる。
海斗くんと栞さんは困惑した顔のまま、スタッフの誘導に従い二列目に並んだ。
「リィ、ハンカチ」
クラッチバッグから取り出したそれを渡され、後ろを向いて上に伸びる階段を見ながら涙を拭き取った。
「翠葉?」
「どうかしたの?」
ふたりに顔を覗き込まれ、慌てて言葉を探す。
「初めて会ったのは五月の終り、ウィステリアデパートで――」
話し始めてすぐ、否定したい衝動に駆られた。
「でもそれはっ、陶芸作家の朗元さんとして会ったのであって、藤宮の会長っていうのは知らなくて――」
ツカサたちのおじいさんなんて知らなかった。
目に涙が溜まり始めたとき、ちょうどよくスタッフから声がかかる。
海斗くんと栞さんは困惑した顔のまま、スタッフの誘導に従い二列目に並んだ。
「リィ、ハンカチ」
クラッチバッグから取り出したそれを渡され、後ろを向いて上に伸びる階段を見ながら涙を拭き取った。