光のもとでⅠ
「蒼兄っ!? 違うっ、大丈夫だからって言おうとしたのっ」
 蒼兄の腕を掴み全体重をかけて引き止めた。
 アルコールの香りよりも、ツカサと秋斗さんのいる場所へ蒼兄抜きで行くことのほうが抵抗ある。
「蒼兄がいないと困るっ」
 言うと、ピタリと動きが止まった。けれど、見下ろす目には逡巡の色が濃い。しばし見つめ合い、掴んでいた手を外された。
「……戻ってきたら絶対シャワー浴びるから。翠葉はそのデザート最後まで食べること。俺はその間にうがいだけしてくる」
 颯爽と歩きだし、トン、とバスルームのドアが閉まって皆が唖然とする。
「うがいだけはするって……これから彼女に会いに行くわけでもないのにさ」
 唯兄が言うと、楓先生と海斗くんが「ぷっ」と吹き出した。
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