光のもとでⅠ
「そんなに気にしなくても今日まではうちの人間と御園生家しかいないから大丈夫だよ」
 昨夜涼先生に言われたことと同様のことを楓先生に言われた。
 きっと、ルームウェアで部屋を出たことを気にしていると思われているのだ。でも、実際のところは昨日ほど気にしてはいなかった。なぜかと言うと、コートを着てしまえば中に何を着ているのかはわからないから。
 楓先生の笑顔につられて笑みを浮かべたものの、うまくは笑えなかったみたい。
「気になるのはほかのこと?」
 返事をすることはできなくて、代わりに下手な笑みは取り下げた。
 明日の朝までは家族以外の人に会うことはないと思っていたから、まさかこのタイミングで緊張を再装備することになるとは思っていなかったのだ。
「いつものあんちゃんなら、話が出た時点で断ってきそうなものだけど?」
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