光のもとでⅠ
「回転するといっても低速だから構えなくていい。具合が悪くなればすぐに保健室へ連れていく」
 司先輩はこっちを見るでもなくそう言った。
 司先輩は意地悪だ。でも、素っ気無いけどいつも優しい。
 優しくされているのはわかるのに、肩や心が重くならないから不思議。
 息苦しくならないのが、不思議……。
 少し前まで霧の中にいたと思ったのに、司先輩の言葉で霧がさっと引いた。
 今は晴れてもいなければ曇ってもいない。雨も降っていなければ雪も降らない。
 司先輩の作った特別な空間に瞬間移動させられて救われる。
 たとえるならそんな感じ。
 ……変な人って言ったら怒られるんだろうな。それなら魔法使いということにしておこう。
 それでも、「魔法使いなんているわけないだろ」と一言で却下されてしまう気がする。
 もしくは、「現実逃避しすぎ」かな。
 しばし空想に耽っている間に、今現在予定されているイベントを加納先輩が読み上げていた。
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