光のもとでⅠ
 緊張したのに安心したっておかしいかな。
 逡巡しつつ蒼兄の顔に視線を戻す。と、蒼兄はポツリと零した。
「……なら成功、かな?」
「……何が成功、なの?」
 蒼兄は私側に身体を向け直し、
「さっきのティータイム、セッティングしたのは栞さんと湊さんなんだ」
「どういう意味……?」
「記憶が戻ったとき、翠葉、気にしてただろ? あのメンバーが秋斗先輩のことをどう思っているのか、関係がギクシャクしてないか」
 私は絶句する。
「試験前の会食は携帯事件の直後だったし、まともな集まりってそれ以降なかったから、ギクシャクしてないところをちゃんと見せて安心させたいって言ってくれたんだ」
 さっきの集まりにそんな意味があったなんて知らなくて、じわりと涙が目に浮かぶ。
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