光のもとでⅠ
「どうなさいますか?」とは訊かれない。
「こちらにお気に召す髪型があると良いのですが……」
 少し控え目に、けれど私が困らないよういくつかに付箋がついている。
「今日のドレスも素敵ですね」
 ブースの壁には優しい藤色のドレスがかけられていた。丈は膝あたりだろうか。
 スクエアネックの縁取りとハイウェストの切り替え部分だけにシャンパンゴールドのビーズ刺繍があしらわれており、ほかにはこれといった飾りは付いていない。薄いオーガンジーを何枚も重ねたドレスは、空気を含んだようにスカートの裾が波打っていた。それが示すのは、生地をたっぷりと使ったフレアスカート。
 ストールもドレスと同じようにビーズ刺繍が施されていた。
 これらは静さんからの贈り物。私がなかなかホテルを利用しないことを理由に、「こんなときくらいはプレゼントを贈らせてほしい」と言われたのだ。
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