光のもとでⅠ
ようやく私たちから離れたお父さんは、スーツの中に着ているベストが藤色で、お母さんと同じ深紫のアスコットタイをしている。それを留めるラペルピンは藤の花びらをモチーフにしたものだった。ポケットには唯兄たちと同様、藤色のポケットチーフが彩りを添えている。
「ん? これか?」
お父さんは私の視線に気づいて身に着けているものを、ひょい、と指でつまむ。
「さすがに付き合いが長いともらったもので全身コーディネートできるくらいになるぞ?」
お父さんはいつもと何も変わらない。藤色を纏っていても、気負っている感じが全くしない。
「だからさ、そういうところ。狸でしょ?」
唯兄がじとりと睨んだ。
「俺、零樹さんと碧さんがオンシ所有者っていうのは初耳だったからねっ?」
「あら、言ってなかったかしら?」
「さぁ……とくに言うようなことでもないしなぁ?」
お父さんとお母さんはきょとんとした顔で首を傾げる。
「ん? これか?」
お父さんは私の視線に気づいて身に着けているものを、ひょい、と指でつまむ。
「さすがに付き合いが長いともらったもので全身コーディネートできるくらいになるぞ?」
お父さんはいつもと何も変わらない。藤色を纏っていても、気負っている感じが全くしない。
「だからさ、そういうところ。狸でしょ?」
唯兄がじとりと睨んだ。
「俺、零樹さんと碧さんがオンシ所有者っていうのは初耳だったからねっ?」
「あら、言ってなかったかしら?」
「さぁ……とくに言うようなことでもないしなぁ?」
お父さんとお母さんはきょとんとした顔で首を傾げる。