光のもとでⅠ
「敵に向かって親切も何もないでしょうっ!?」
「あら……ずいぶん弱気ね? 天下の藤宮警備が」
 ヒールの靴を履いても、お母さんの身長は唯兄よりも低い。物理的にはお母さんのほうが低いのに、唯兄が見下ろされている気がするのはどうしてだろう。
 唯兄は、完全にお母さんに圧されていた。
「それはそれはそれは……弊社をそこまで買っていただきありがとうございます」
「私、唯よりも藤宮警備との付き合いも静との付き合いも長いのよ。このくらいなんてことないわ。くれぐれも、翠葉のことよろしくね? 静には、翠葉に傷ひとつでもつこうものなら覚えておいてねって言ってあるの」
 悠然と笑うお母さんから唯兄は後ずさる。
 後ずさりつつも、
「それって具体的にどんな?」
 唯兄の質問に口を開いたのはお父さん。
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