光のもとでⅠ
「唯……怪しすぎるからそれはやめとけ」
 蒼兄に力ずくで剥がされ、唯兄はとても残念そうな顔をした。
 ステーションの二階部分はほとんどの面積がパーティー会場のため、収容人数はそれなり。お父さんの話しだと二百人くらいは入るそう。
 立食パーティーとは言えど、壁際には疲れた人が休めるように椅子も用意されている。しかし、まだパーティーが始まったばかりということもあり、座っている人はひとりもいない。
 私と唯兄は乾杯が終わると早々に、会場の一番後ろの壁際に逃れた。蒼兄も一緒に離脱したがっていたけれど、唯兄が華麗な話術で牽制した。
「あんちゃんは兄妹代表で零樹さんたちと一緒に挨拶回りしたらいいと思うよ」
 にこりと笑って、
「さっきリィから引き剥がされた仕返し」
 と小声で言った。
 そんなやり取りを見てお父さんたちは笑っていたけれど、しっかり唯兄に賛同し、以前お世話になった人や藤の会と会長の誕生パーティーでしか会う機会のない人たちへの挨拶へ連れて行くことにしたみたい。
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