光のもとでⅠ
 椅子に座って一息つくと、
「ねぇ、本当に知らなかったの?」
「何を?」
「碧さんと零樹さんが恩賜所有者だったこと」
「うん、知らなかったよ? ……そもそも、高校と大学が藤宮出身というのは知っていたけど、静さんみたいな知り合いがいることは私が高校に入ってしばらくするまで知らなかったし……」
 唯兄は顔を覆い、
「もうやだ……何も聞かなかったことにしたい」
 カックリとうな垂れたところに、
「お飲み物はいかがですか?」
 唯兄の半身脇に立ったのは御崎さんだった。
「っつか、なんで総支配人がウェイターしてんですか……」
「細かいことはお気になさらず」
 にこりと笑ってトレイに並ぶ飲み物の説明をしてくれる。
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