光のもとでⅠ
 レストランの四方に視線をめぐらせるものの、防犯カメラらしきものは見当たらない。
「病院や地下駐車場のようにわかりやすいところには設置しておらぬのじゃ。牽制の意味を持たせる場所には目を引きやすいカメラと別に、一見してわからぬカメラが設置しておる」
 どうしてだろう……。
 これだけの招待客がなんのチェックも受けずパレスへ入場しているとは思いがたい。けれども、ここに会長がいるのだ。ならば、防犯カメラは常に稼動しておいたほうがいいのではないだろうか。
「どうして、ですか? 朗元さんがここにいるのに……」
 朗元さんはくつくつと笑う。
「うちの者は皆優秀での。ここに配属されておる者は誰もが唇の動きを読めるじゃろうて。ようやく会えたお嬢さんとの会話を人に見られたままではわしが落ち着かん」
 自分が、とは言うけれど、きっと私を気遣ってくれたのだと思う。その優しさに、さらに心がほぐれる。
 会長だけれど朗元さんだ。ツカサたちのおじいさんだけど、ちゃんと朗元さんだ……。
 私の中で、ようやくふたりの人物がひとりになった瞬間だった。
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