光のもとでⅠ

22

 ステージの下は想像していたものとは全く違った。
 歌舞伎や舞台下の奈落を想像していたけれど、そこはきれいに整備された空間だった。
 薄暗いことに変わりはないけれど、円形のホールは上のステージより少し広いくらいで、そこから四方に向かって通路が伸びている。
「じゃ、各ペア桜林館を一周したらここに集合ね」
 加納先輩の言葉にみんなが頷いた。
「翠葉ちゃん、ゆっくり歩いてね?」
 里見先輩に声をかけられてどうしてだろう、と思う。
「そうそう、翠葉を見たいって男子生徒は結構多いのよ~?」
 荒川先輩の言葉に絶句した。
 私を見たところでなんの特典もないんだけどな……。
「藤宮司、ちゃんとガードしなさいよねっ?」
 桃華さんが口にすると、
「目的は女子生徒に着たいと思わせること。それから男子生徒の目を引くこと! そんなわけで女子メンバーは笑顔で歩けばなお良し! な、司っ!」
 春日先輩の言葉に司先輩は舌打ちをした。
「別にそこまでする必要ないだろ」
「何言ってるんだよ。翠葉ちゃんを笑わせるのはおまえの仕事だからな?」
 春日先輩の言葉に、「そうよ」と荒川先輩が乗じる。
 すると、
「翠、下手な笑顔でいいから適当に貼り付けとけ。じゃ、行くぞ」
 と、手を引かれ一本の通路を進むことになった。
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