光のもとでⅠ
 一階で歩調を緩めたけれど、思いを振り切るようにドアから目を逸らし、二階へと続く階段を進む。
 一階フロアにいるスタッフは招待客の動向を注意深く見ているだろう。もしかしたら、すぐ自分に気づいて声をかけてくれる人がいたかもしれない。でも、間違いなくさっきよりは混んでいるはず。
 確実に警備員が立っているとわかる場所が一ヶ所あるけれど、この出口からそこまでは距離があるし、スタッフに気づいてもらうことも自分が捕まえることもできなかった場合、あの人ごみを今度はひとりで掻き分け二階まで行かなくてはならない。
 そんなリスクを負うよりは、このまま非常階段を行ったほうがいい。
 もつれる足が憎らしい。息も苦しく身体の色んな部分が思うように動かない。悔しくて涙が頬を伝うのを、ぐい、と手の甲で拭う。
 泣くのはあとで――。
 二階に着くと、全体重をかけて重いドアを引き開けた。
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