光のもとでⅠ
 明るいフロアに出るはずなのに目の前が暗い。……違う、暗いのではなく人――。
 黒いスーツを着た背の高い人が目の前に立っていた。
「お嬢様、こちらでお待ちください」
 誰……。
「そのお姿で走られては悪目立ちしてしまいます」
 言われて気づく。警護の人だと。
 でも、会場はすぐそこだと言うのに――すぐそこに先生たちがいるのにっ。
 そう言いたくても思いは声にならない。私の口は呼吸をすることでいっぱいいっぱいだった。
 でも、読んでくれる。この人なら読んでくれる。
 信じてカメラの前で口にしたことと同じことを繰り返した。
「承知しております。カメラへ向けたお嬢様のメッセージは伝わっております。今一度お願い申し上げます。どうか、非常階段へお戻りください」
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