光のもとでⅠ
 口元を覆うものを外したくて手を伸ばそうとしたら止められた。
「嫌かもしれないけど今はこれを外しちゃだめだよ」
「ここ……」
「ここは藤倉の病院だ。安心していいよ」
 安心……。
 場所を確認するために顔を右へ向けると、窓の外が暗かった。
「っ……朗元さんっ」
 急に起き上がろうとした身体を押さえつけられる。
「翠葉ちゃん、落ち着きなさい。父は大丈夫だから。今はすべての処置を終えて回復を待っているところだ」
 胸が苦しくて胸部の着衣を握りしめるといくつもの吸盤が胸に取り付けられていた。それがなんなのかはすぐにわかったし、今は朗元さんのことが気になる。
 回復を待つって何? どういうこと?
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