光のもとでⅠ
 今までに何度となく心臓の説明は受けてきた。だから、内容を理解できないわけではない。
 現在進行形で胸が苦しいのもきちんと体感している。なのに、どうしてか自分の話を聞いている感覚には程遠い。
「幸い、人口弁に置換するのではなく、翠葉ちゃん自身の弁膜を形成する手術でなんとかなりそうなんだ」
 それはどのくらい大変なことで、どのくらい幸いなことなのだろう……。
 少し考え、お父さんとお母さんが深刻な顔をするくらいには大ごとなのだと察する。そんなふうにしか捉えることができなかった。
「うちの病院にはその手術をするための内視鏡があるんだ。だから、開胸することなく手術を行える。胸を開かないということは、それだけ回復時間も短縮できるということなんだよ」
 回復時間の短縮……?
 そこで初めて大きな衝撃を感じた。
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