光のもとでⅠ
 心臓の手術なのだ。手術してすぐに退院できるわけがない。回復時間――それはどのくらいかかるものなの? 三学期には間に合うの?
「不安かい?」
 いつもどおり、柔和な笑顔で尋ねられる。
「不安なことは口に出してごらん。手術のことも手術後のことも、私が答えられることはすべて答えるから」
 私は咄嗟に開いた口を閉じた。
 今、私の身体はとても不安定な状態で、手術が必要なほどには危険な状態なのだろう。そんな状況下で留年の心配を口にしていいものなのか――。
 逡巡していると、紫先生の手が伸びてきて目尻の涙を拭われた。
「なんでもいいよ。言ってごらん」
「……どのくらい、かかりますか? 退院、まで」
「……胃潰瘍からきている貧血の状態も良くないから、リハビリも兼ねて一ヶ月……もう少しかかるかな」
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