光のもとでⅠ
「翠葉ごめん。……おじい様の体調ひとつで市場に影響が出るの」
 財閥の会長ともなればそのくらいの影響力があって然るべきだろう。では、湊先生はいったい何に謝ろうとしているのか……。
「今回のこと、表向きには翠葉が倒れておじい様の命令で医師陣が医務室へ呼びつけられたことになっているの」
 それのどこに問題があるのか……。
「もっと言うなら、おじい様は翠葉が心配で自分の誕生パーティーを放棄したことになっているのよ」
 気まずそうに目を逸らされ納得する。
 静さんが湊先生に向けた言葉の意味もわかったし、湊先生が何を気にしているのかも理解した。
「私、朗元さんから、紫紺の恩賜をいただきました。それを身に着けて、朗元さんのエスコートで会場へ戻る予定だったんです。結局、そうはできなかったけど……でも、私が倒れて朗元さんが付き添っているという情報が流れたのなら、同等の効果は得られましたよね? 良かった……」
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