光のもとでⅠ
 私は先日のお父さんとお母さんの言葉を借りる。
「静さんは命がけで私を守らなくちゃですものね?」
 静さんに向かって言う。と、湊先生がとても不思議そうな顔をした。湊先生に質問される前に次の言葉を繰り出す。
「だって、私に傷がひとつでもつこうものなら湊先生と離婚しなくちゃいけないし、会長職をこなしつつ父の部下になってこき使われる約束もしてしまったのでしょう?」
 少し笑みを添えて言うと、静さんは苦笑した。
「苦笑い」という言葉のお手本になりそうな表情だった。
「静、私聞いてないんだけど……」
「……言うつもりがなかったからな。……まぁ、そんな事情もあって私は是が非でも翠葉ちゃんを守らなくてはいけない。実際に動くのは警備会社の人間だが……」
 言ったあと、ポツリと零す。
「零樹のやつ……。いや、碧か?」
 それはこのことを私に話した犯人のことだろうか。
「静さん、残念。ふたりとも、です」
 私の言葉に静さんはさらに苦い顔をした。どこか報復を企んでいそうな顔にも見える。
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