光のもとでⅠ
「珍しいですね?」
「何が?」
 思っていることを口にすることが……。
 そう返そうと思ったけどやめた。
「いえ、なんでもないです」
「はい、その顔で観覧席を見る」
「え……?」
 観覧席に視線をやると、一年B組の前だった。
「翠のホームグラウンドだろ」
 相変わらずなんでもないことのように話す。
 つまらなそうに、でも、何か企んでいたことがうまくいったときのような表情で。
「翠葉ーっ!」
 飛鳥ちゃんに声をかけられた。
 その前の席に座っていた佐野くんが、「立花うるさい」と指摘する。
 佐野くんに諭されつつも、飛鳥ちゃんは私を呼ぶことをやめなかった。
 最前列にいた希和ちゃんや理美ちゃん、早穂ちゃんにも声をかけられつつクラスメイトの前を通り過ぎる。と、次は朝に自己紹介を交わした実乃里さんに声をかけられた。
「うちのクラス、全員賛成よっ!」
 なんとも力強い言葉だ。
「ありがとう」と答え終わる前に、
「司先輩、こっち向いてくださーいっ!」
 と、黄色い声も飛び交う。
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