光のもとでⅠ
「人工呼吸器のほかには首から栄養を送るための管一本。左腕の静脈に点滴一本と左手首動脈に点滴の針が入っているからちょっと手の形を固定させてもらってる。それと……鼻に入っている管は痰を出すためのもので、心臓の廃液を流すためのドレーンが二本。あとは、痛みが出てきたら麻酔を流せるように入れてある肋間神経ブロックの管と尿管。うん、結構大掛かりな状態だと思う」
 まじまじと見つめられても反応のしようがない。
「まだ麻酔が効いていて痛みはないと思うけど、痛みを感じたらすぐにナースコール押してね。そしたら麻酔を流すから」
 ナースコールは右手に握らされていると聞き、「はい」と答える代わりに一度だけ瞬きをした。
 少し拍子抜け。こんなにも普通に覚醒するものなのか、と。
 自分の中ではついさっき手術室に入ったばかりという感覚のため、もう夕方というのが信じられない。
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