光のもとでⅠ
 時間の経過を感じられない中、自由にならない身体から状況を解する。
 時間より何より、気になって仕方のないものがひとつ。
 人工呼吸器がついているのに苦しい。心臓が、というよりはこの口に入れられているものが苦しさの正体な気がする。
 これ、本当に呼吸を助けてくれているのだろうか……。できることならすぐにでも外しほしい。
 切に願うものの、声は出せないし意思表示できるものもない。
 諦めて目を瞑る。と、人が病室に入ってくる音がした。
 足音を聞いて紫先生と藤原さんだと確信する。
 あともうひとりは誰だろう……。
 不思議に思っていると、最初に顔を覗き込んだのは涼先生だった。
「おはようございます。消化器の手術も心臓の手術も問題なく終了しました。これで貧血の原因はなくなったかと思います。このあとは定期的に鉄剤の補充をして貧血の症状を改善していきましょう」
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