光のもとでⅠ
 それだけ言うと涼先生は下がり、紫先生が枕元に立った。
「涼先生の言うとおりだ。安心していいよ。胸にメスを入れることなく手術は終わった。傷は最小限にとどめることができたよ」
 朗らかに声をかけてくれた。その隣の藤原さんは、
「右脇に小さな傷跡が残るけど、数年もすれば目立たなくなるでしょう。楓くん、人工呼吸器は何時に外す予定?」
「八時です」
「そう」
 楓先生とのやり取りを終えると、藤原さんはこちらに向き直る。
「苦しいでしょうけどあと少しの我慢ね。それから、術中輸血はせずに済んだから。その点においては合併症の心配はしなくていいわ」
 いつもどおり、淡々と説明をしてくれた。
「このままいけば明後日には面会謝絶も解けるでしょう」
 一通りの説明と診察が終わると、
「きれいな心音になったわね」
 と、表情よりも声音が柔らかくなった。
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