光のもとでⅠ
 確かに、手術を受けるまではバックンバックンとうるさく暴れている状態だったのに、今は一定の強さで規則正しくトクントクンと動いている。
 最後に、「よくがんばった」と言われたけれど、がんばったのは私ではない。
 私は手術室に入って点滴の針を刺すところまでしか知らない。あとはずっと麻酔をかけられて寝ていただけなのだ。
「少し休もう?」
 ベッドの足元に立っていた楓先生に言われたけれど、人工呼吸器が気になりすぎて眠ることはできず、ただひたすらゆっくりと時間が過ぎていった。

 八時になると人工呼吸器が外された。
 喉の奥まで入った太い管が抜かれるとだいぶ楽になる。異物感と閉塞感がなくなり、喉と口腔内の筋肉が開放された感じ。
 代わりに付けられたものは酸素マスク。
 楓先生にお礼を言おうと思ったけど声が出なかった。
 そこで思い出す。人工呼吸器を外したあと、声が掠れたり声が出ないことがあるということを……。
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