光のもとでⅠ
 階下の通路に着くと下ろされる。
 携帯を取り出したところを見ると、私のバイタルをチェックしているのだろう。
「軽い貧血だな。少し歩かせすぎた。悪い」
「……あの、先輩は何も悪くないと思います」
「……座ってる体勢はきつくないのか」
「はい。でも、床のほうが楽かも……」
 と、階段に腰を下ろしていたものを通路の方へとずらした。
 壁に背を預けて深呼吸を繰り返す。
 背中が冷たい。
 視界には薄暗い通路と真正面の壁。
「暗いところって、なんだか不安になりますね」
 なんとなしに口にした言葉だった。
 目を開けていても暗闇ならば、と目を閉じる。
「翠、俺がここにいる」
 その声に目を開けると、真正面は壁ではなく司先輩の顔になっていた。
「何があっても変わらないし離れないって言っただろ」
 言われて、いつかの仮眠室での出来事を思い出す。
「本当だ……。司先輩がいた」
「私たちもいるわよ~?」
 通路の先から声が聞こえてきた。
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