光のもとでⅠ
「司も長居はせぬように。それと――何を話してもかまわぬが、お嬢さんが走ったことだけは責めるでないぞ」
 朗元さんが病室を出たあと、ツカサが小さく零した。
「狸じじぃ……」
 あまり聞かない言葉にびっくりしつつ、
「朗元さん……ツカサが怒っている理由を知っていたのね」
 確認するように訊いてみると、ツカサが眉間にシワを寄せて振り返った。
「まさかと思うけど……翠が走ったことを怒っているとでも思っているのか?」
「……違うの?」
「違うから……」
 ツカサは腕にかけていたコートをソファに置くと、少々粗い仕草で革のかばんから包みをふたつ取り出した。
「走ったことを説教したところで根本解決にはならないだろ」
 言われてみればそうだけれど、では何を怒られるのだろう……。
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