光のもとでⅠ
「今日ここに来たのが蒼樹でも唯でもない理由。それはね、これを渡すため」
 恐る恐るクリアファイルを手に取ると、ツカサが持ってきたプリントと同様のことが書かれていた。違うことと言えば、発行された日付けくらい。
「学園長と高校長の直筆サインに学校印つき。正式書類だよ」
 選ぶって……ツカサと秋斗さんのどちらかを、ということ――?
「この役はさ、翠葉ちゃんの学力を保てさえすれば俺でも司でもかまわないんだ。だから、翠葉ちゃんが選んでね。都度、連絡をもらったほうが教えに来るから」
 何を言うこともできなかった。クリアファイルを持つ手が震えないようにするのが精一杯。すると、秋斗さんの大きな手が私の手に重ねられた。
「……翠葉ちゃんは優しいから、どちらかを選ぶことはしないよね。きっと、俺と司を交互に呼ぶんだろうね」
 重ねられた手からじんじんと熱すぎる体温が伝わってくる。
 秋斗さんは、「それでいいんだよ」と言い残して病室を出ていった。
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