光のもとでⅠ
「翠葉、寒くないか?」
「うん。冷たい風が気持ちいいくらい……」
「でも、冷えは禁物! ここで風邪とかひいたらしゃれんなんないよ」
「そうそう、明日からリハビリ始まるんだし」
 ふたりに連行されるようにエレベーターホール裏にある屋内へと移動した。
 ガラス張りの屋内は外同様寒いものの、エアコンを入れると十分とかからないうちに空気があたたまる。
 ブゥン、とエアコンの音がしている中、口火を切ったのは唯兄だった。
「さ、お悩み相談と参りましょうか?」
 最初から話を聞くために外へ連れ出してくれたのだろう。
 ありがたいのに、何から話したらいいのかがわからない。
「んーと……本当は訊かなくてもわかってんだけどさ」
 唯兄が私の頬をツンと人差し指でつついた。
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