光のもとでⅠ
 心臓が止まった。間違いなく止まったと思った。
 だけど、それは気のせいだったかもしれなくて、すぐに痛いくらいの鼓動を感じ始める。逆に、頭は真っ白になった。意識が飛ぶ直前のブラックアウトならぬホワイトアウト。
「解約。つまり、もうあの携帯にはつながらない。メールが届かないのは――」
「やめて……」
 掠れた小さな声しか出せなかった。耳を塞ぐのには遅すぎた。
「翠が招いたことだ……。連絡がつかないとわかった時点でなぜ人に訊かなかった? 訊いたら教えてくれる人間はいたはずだ」
「…………」
「訊こうとしなかったのは翠だろ? ――決して自分からは動かない。手を放そうともしない。それで誰が救われる? 誰が得をする? ……利益が生まれる場所があるなら教えてほしいんだけど」
「…………」
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