光のもとでⅠ
 続きはすぐに発せられなかった。
 ツカサはサイドテーブルからメモ帳を取り出すと、サラサラと数字を書き連ねた。
 訊かなくてもわかる。携帯の番号。
「秋兄の仕事用回線。つながらないことはないはず――ただし、本人に出る意思があればの話だけど」
 キュッ、と胃が縮んだ。
「ラストチャンスかもよ?」
「え……?」
「秋兄、明日には日本を発つから」
 ニホン、ヲ、タツ――?
 言葉本来が持つ意味が、ちゃんと変換されて頭に届かない。
「ニホン、ヲ、タツ……?」
 漢字以前、日本語が理解できなくなってしまった人のように、声に出す。
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