光のもとでⅠ
「そうね、くじ運は悪くなかったかもしれないわ」
 ……くじ運……。
 結婚にくじ運ってあるのかな?
 あ、違うかな……。お見合いだからくじ運なのだろうか……。
「先生方、今日は地下道から帰られますか? それとも地上から?」
 美都先輩が尋ねると、学園長が、
「私は職員棟に迎えの車が来ているはずだから地上でかまわんよ」
 と答え、残る校長先生と篠宮先生も「地上から」と答え、全員が「地上」と答えた。
 この学園の地下には地下道なるものが存在するらしい。
 でも、さっきのステージ下を見たらあり得なくはないかな、と思った。
「じゃ、ステージごと下げるので、一度着席してください」
 美都先輩の指示にみんな従い席に着く。
 今日何度目かの床の振動を足の裏に感じつつ、徐々に下がっていく視界を楽しんだ。
 けれどそれも束の間。
 さっきと同じ。体が重い――。
 重いというよりは力が少しずつ抜けていく感じがした。
 気分的には床に力を吸い取られているような、そんな感じ。
 あぁ、これを重力というのだろうか……。
 あとは保健室まで戻るだけだし、気力でなんとかもつだろうか。
 逡巡していると、目の前が白み始めた。
「ちょっとっっっ」
 この声は誰の声だったかな――。
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