光のもとでⅠ
「翠葉っ」
 呼ばれて振り返ると、桃華さんに抱きつかれた。
「退院おめでとうっ」
 桃華さんには珍しく、飛鳥ちゃん張りにぎゅっと抱きしめられる。
「もう……本当に心配したんだからっ」
 耳に届く声は音量をセーブされているのに、ひどく力の篭った、震えた声だった。
「ごめんね、心配かけて」
「もう、大丈夫なの?」
「うん。血液の逆流はしなくなった。でも、やっぱり走ったりはできないみたい……」
「監視兼ストッパーならいくらでもするわ」
「ふふ、お願いします」
 教室に入ると、黒板に「おかえりなさい」の文字が大きく書かれていた。その文字の周りにクラスメイトひとりひとりからのメッセージが書かれている。
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