光のもとでⅠ
「私たちは自分が安心したいからここまで来たのであって、別に翠葉ちゃんが謝る必要はないんだからねっ」
 茜先輩の言葉にどう返事をしようかと考えていると、
「茜先輩に一票」と、次々と声が上がる。
 そのとき、私の携帯が鳴りだした。
「これ、どうしたらいいの……?」
 普段の通話画面とは違ったため、海斗くんに助けを求めると、
「これでOK。ここに向かって普通に喋ってみ?」
「もしもし……」
『あ、出た出た。朝陽だけど、体は大丈夫?』
 ディスプレイには王子スマイル全開の美都先輩が映っていた。
「あ、大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」
『うん、大丈夫ならいいんだけどね。……あれ? みんなそこにいるの?』
 え?
「はい、いますけど……でも、なんで?」
『だって、翠葉ちゃんの後ろ、みんなが顔覗かせてるから。司はいないみたいだね? あぁ千里もいないか』
「司先輩も来てはくれたんですけど、二言話したらドアを閉めました」
『それ、日本語おかしくない? 二言話して帰ったって言うならわかるんだけど』
「それが……保健室には足を踏み入れなかったものですから……」
『くっ、司らしいけど、バカだなぁ……』
 こんな会話をしていても王子らしい品を標準装備で笑う。
< 931 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop