光のもとでⅠ
 反応が返ってくるまでの時間は恐怖以外の何ものでもない。
 こんなに前の話を持ち出して、留学しないでと言っているのと変わらない。側にいてほしいと言っているのと変わらない。こんなこと言うつもりなかったのに。どうして――。
「翠」
 声をかけられてもツカサの方を向くのが怖かった。返される言葉が怖かった。
 言うだけ言って、返事をもらう心構えなんて全くできていなかった。
「翠」
 頑なに下を向いていると、強引に身体の向きを変えられた。その拍子に手から缶が落ちる。
 トサ、と地面に落ちる缶を目で追う。
 顔だけは直視しないように、目だけは直視しないように必死に顔を背けていると、
「いい加減こっちを向け」
 低い声で言われ従ってしまう。
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